会社に対する金銭債権の株式化 デッド・エクイティ・スワップ
中小企業の株式会社の経営者の方から,資本金の増額の登記の依頼を受けることがあります。資本金とは,商業登記簿の資本の欄に書かれている会社の財産を示したものです。つまり,ここに例えば資本金1000万円と書かれていれば,法律上は,1000万円の財産がこの会社にあるということになります。
ところが,実際には,資本は現金で,会社は保有しておらず,社用者や土地建物等の固定資産などになっていることが多く,経営状態の悪い会社では資本が欠損状態になっている場合もあります。
資本金は,事実上,有名無実になってしまっています。法律と現実の経営のギャップと申し上げたら良いのかもしれません。
ですから,会社の経営状態は登記簿謄本(登記事項証明書)だけでは,不十分で,貸借対照表,損益計算書等の計算書類を確認しなければ,本当のところは判然としないとされています。
それでも,この資本金に対する会社の信用度は,現在でも取引の社会では生きているようです。
資本金が小さいと取引先から相手にされない。あるいは,官庁からの許認可を得る為に,資本金が1000万円以上必要だから資本増額の登記をして欲しいとご依頼を賜ります。
例えば,現在500万円の会社が1000万円まで増資するには,現実に現金が500万円あれば簡単ですが,そんな現金を一度に集めることは難しい場合が多いのですが,他にも方法はあります。
中小企業の社長さんは,会社に対して会計上,お金を貸し付けている場合があります。
社長さんの会社に対する貸付金を株式に変えて,資本金を増資するという方法を使うことができる場合があります。(会社法207条9項5号)
この制度は平成18年5月1日から施行された会社法という法律に新しく取り入れられたものです。
金融機関などの債権者が事実上回収が難しい場合に,タダで債権放棄するのも勿体無いので,代わりにその会社の株式を頂いておこうというものです。
債務者である会社に再生の見込みがあるが巨額な債権の回収は難しい場合に貸倒金になるより株式の方が良いだろうという経営判断をした場合にはメリットが債権者にもあるわけです。(デッド・エクイティ・スワップ 債権の現物出資というものです)
このように,もともとは,金融機関の債権回収対策として考えられたようですが,中小企業の社長さんの資本増加や将来の相続税対策にもなるということで注目されている制度でもあります。
なかなか興味深い制度ですので,今後もより,研究をしていきたいと思っております。