家族の財産の相続と有効活用(家族による民事信託)
こんにちは。近年,相続が発生すると,故人の意思とはまったく関係なく,ご家庭内で遺産分割協議が紛糾してしまうケースが増加しています。
このような問題が発生する背景には,「長男が家督を自動的に相続できる。」という考え方をお持ちの方が多いため,ご自身が亡くなった後に,遺産を巡って遺族が紛争を引き起こすとは夢にも思っていないからです。
戦後,家督相続制度は,廃止されました。
現在の民法では,長男,次男,長女,次女などの続柄にかかわらず,子供全員が同じ割合で平等に遺産を相続します。配偶者がいれば,配偶者も子供たちと同順位で相続することができます。
従いまして,故人と事実上の跡取りとなる方たちが,相続に関する正しい知識を持っていないため,遺産を当然に全部相続できると思った相続人と他の相続人間で紛争になるのです。
では,紛争を予防する対策はないのでしょうか?
これまで,紛争を防止する対策としては,①遺言書を残す,②生前に贈与する,が主に専門家より推奨されてきました。
しかし,これらの手続きには,問題があります。
まず,遺言書は大半の遺産を指定した相続人に承継できますが,遺留分を要求されるとその価額に応じた遺産をその相続人へ譲渡しなければなりません。(ただし,相続人が兄弟姉妹のみの場合は,遺留分が認められていませんので遺言書が最良の解決策になります。)
次に,生前に贈与する方法があります。しかし,例えば不動産を贈与すると高額な贈与税が課税される可能性があります。ですから,不動産の所有権の一部を何年かに分割して譲渡する方法がよく行われています。しかし,贈与の登記を数年以上分割して申請するのは,管理が面倒で費用がかかります。
高額な贈与の場合に,相続時精算課税制度の特例を使用する方法がありますが,年齢や上限金額など様々な制限があります。また,この制度で自宅を生前贈与をすると,相続税申告時に小規模宅地の特例を利用できない可能性があります。
なお,生前贈与は遺留分を計算するときに,被相続人の財産として合算されます。
そこで,遺言書や生前贈与で発生しそうな問題を回避するために,専門家達は,新たな手続きを注目しています。
それは,「民事信託」という手続きです。この手続きを利用すれば,あなたの死後,家族間の遺産争いを未然に予防する効果が期待できます。
また,生前に認知症になった場合でも信託契約を成立させておけば成年後見制度を利用せずに財産を管理してもらうことが期待できます。
成年後見とは,被後見人(たとえば,認知症などにより自分で財産を管理できない人)に代わって後見人が財産を管理する制度です。
後見人は,財産の保全(被後見人の財産をできる限り減らさずに維持)を目的とします。被後見人の妻や子供などの家族の財産管理の想い(たとえば,相続税対策など)を後見人は考慮しません。
余剰資金で不動産や金融商品を購入して運用し,被後見人の財産から利益をあげることも禁止されています。
しかし,本人がお元気なうちに,家族全体のご希望に沿った形で民事信託契約を成立させれておけば,これらの財産管理・資産運用を柔軟に設計できます。
かつて,「信託」は信託銀行,信託会社が営利目的で行う「商事信託」のみ認められていました。
しかし,欧米の先進国は従来から,個人による非営利の信託を認めており,歴史的には,十字軍の時代から存在していました。
わが国でも平成18年に信託法が改正され,営利目的ではない,例えば家族等による信託が認められるようになりました。
このような,家族等による信託のことを,法律改正以前からの「商事信託」と区別して「民事信託」といいます。
例えば父親が高齢なので,認知症になったら賃貸不動産の管理が心配だ,だから,長男に信託して不動産を管理してもらおう,というのが家族間での民事信託です。
家族による民事信託は,あなたのご家庭の状況に応じて,作成する注文型のサービスです。
家族の財産管理等に不安や悩みがある方は,ぜひ,ご相談ください。
このホームページのお問い合わせ欄又は,052-831-8757までお電話で相談日をご予約して来所ください。
司法書士横山和史