業者の過払金逃れ
過払金返還請求は,全体的には落ち着いてきているのではないかと思います。それでも,まだ,テレビコマーシャル等で宣伝広告をしている弁護士や司法書士の事務所を見ていると大きな宣伝をするほど案件があるのかな?と疑問に思います。
ところで,最近,時々あるのが,過払金を免れるために,貸金業者間で営業譲渡,債権譲渡,契約切替などをしているケースです。
そのほとんどは,譲渡するほうの業者が経営破たんや廃業を予定している場合が多く,これらの行為を業者の言うとおりに認めてしまうと過払金返還請求金額の減少または,逆に債務の支払いが残ってしまうことになります。
消費者金融業者と顧客が結ぶ契約の内容は,借入の限度額の枠(極度額)を予め設定しておいて,その枠の範囲内で借入,残高に応じて利息と元金を返済するスライドリボルビング払いという方式を採用しています。
この契約は,貸付ごとに契約をしているわけではなく,顧客と消費者金融との信頼関係に基づく一つの基本契約ということになります。さらに,みなし弁済が成立しない以上,法定金利以上の利息について,消費者金融は過払金返還債務を負うのであり,業者の貸付行為と過払金の債務は表裏一体の関係にあります。
従って,当事者間で契約の終了しない限り,契約期間途中での譲渡で,債権や債務のみを分離して処分することは不可能ということになります。
判例では,最高裁判所が平成23年9月30日及び平成23年11月18日に,クオークローンからプロミスへの債権切替について業務を引き継いだプロミスが過払金債務を承継すべきとの判断をしました。
ただし,債権譲渡などで,下級審で譲受けた業者が過払金を承継するか否か判断が分かれているようです。
しかし,既述のとおり,債権譲渡は過払金債務を逃れるために行われているものであり形式的なものに過ぎず,基本契約の性質上債権のみを分離処分することは不可能なので,それでも業者間で譲渡があったとするならば,それは契約上の地位の移転ということになります。
契約上の地位の移転とは,例えば,借家の賃貸契約で,大家さんが都合で第三者に借家を売却した場合に賃貸人としての地位が第三者に移転するというケースです。
つまり契約当事者が変わるということです。
民法などの法律に規定はありませんが,古くから判例や学説で認められてきた考え方です。
債権譲渡は,債権を債権者が同一性を維持して第三者に譲渡することです。契約当事者ではないため,契約を解除したり取消しをしたりすることができないことが特徴です。
多くの貸金業者間の債権譲渡は,顧客への通知文書を読めば,今後も譲り受けた業者が窓口となって対応する趣旨の文面になっており,これは,貸主が変更になったように読めます。
まとめると,①基本契約の性質からの分離処分の不可②譲受けた業者への顧客への対応などを考慮すると一連の業者間の譲渡行為は契約上の地位の移転ということになります。
つまり,譲受業者は過払金を返還しなければならないことになります。
当然のことですね。