多重債務に関連して詐害行為取消権(民法第424条)
こんにちは。ブログの更新をサボっていまして,いけませんね。今日は,ちょっと仕事でありそうなケースを御紹介したいと思います。
事例
Xは平成20年3月1日に,Aに対して2000万円を利息の定めなし,返済期限を平成21年3月1日として約束してお金を貸し渡しました。Aは,その後,折からの不況により,個人事業の売上と利益がのびず,唯一所有していた土地と建物をYに対して売買代金を2500万円として平成20年6月1日に売り引き渡しました。この日に,不動産の名義は,Aに所有権移転の登記がされました。
そこでXはYに対して民法第424条の詐害行為取消権にもとづいて,AY間の売買契約の取り消しと所有権移転登記の抹消登記手続きを求める訴訟を起こしました。
この訴訟で,Xが証明しなければならない事実は①XとYの債権の存在②Yが財産権の処分などの行為(この例だと土地,建物の売買)③②の行為が債権者を害することになること(債務者Yにめぼしい財産がなくなってしまったこと)④債務者Yが債権者Xを害することを知っていたこと
ということになります。
Xの主張が認められると,売買契約は効力がなくなり,元の状態,すなわちYからAに所有権が戻ることになります。債権者の債権回収を妨害されないように作られた法律の規定をいえるでしょう。
ただ,こういう訴訟の手間を省く為に,銀行などがお金を貸す場合には抵当権などの担保を不動産に設定するのが普通です。担保が設定されていれば第三者に名義が変わっても債権者が優先権を主張できるからです。
実際の相談でよくあるのが,このケースのYにあたる方が,多重債務状態になっているのに,不動産を第三者に売却したりするケースです。
もっともこの後にYが破産申立をすれば,破産債権者を害する行為の否認(破産法第160条)として取引が否定されることになります。
夫の多額の借金を理由として,夫婦間で離婚を前提に話し合いをして夫名義の不動産を財産分与として妻名義に所有権移転する場合にも注意が必要です。不動産の財産分与の額が「不相当に過大」な場合には,詐害行為取消の対象になります。(最判昭和58年12月19日)
多重債務に陥った方が,直前で財産を移転させることには,取引の効力が否定される可能性があるので注意が必要です。財産関係の法律は難しいですね。
では,訴えられたYはどのような反論が考えられるか?
民法第424条1項但し書きでは,YがAとの契約当時にXを害すべき事実を知らなかったことを証明すれば良いことになります。しかし,事実を知らないことを証明するのは。簡単なようで難しいですね。
客観的に書類などで「知らなかった」という記録が残るわけではありません。ほとんど作成される書面は「過去に有る事実があった」ということを証明するものです。
その他の反論として,①売却代金を弁済などその他相当な行為に充てた。②債務者Aの財産状態が復活した③詐害行為取消権が債権者Xが知ったときから2年を経過していたあるいは行為のときから20年経過していたから時効でXの権利は消滅しているという主張が考えられます。