最近の過払金返還訴訟の判例(平成21年1月22日最高裁判決)
消費者金融やクレジットカード会社でキャッシングをしていた顧客がグレーゾン金利により,払い込み過ぎた利息を取り戻すことを過払金返還請求といい,当事務所でもこれまで多数の方にご依頼をいただきまして毎日奮闘しております。
この過払金返還請求ができるようになったのは,利息制限法と出資法による利息の上限の
基準が二重になっていたことが 原因のひとつではあります。
しかし,直接的に法律上の返還請求ができる根拠は不当利得返還請求権(民法703条)という条文にあります。その主張すべき点は,
①顧客に損失が生じたこと
②貸金業者に利得が発生したこと
③①と②の損失と利得の間に因果関係があること
④貸金業者の利得が法律上の原因に基づかないこと
このようなことを裁判で主張し,取引の記録などを証拠に過払金の返還を求めることになります。
では,その払込すぎた利息(過払金)の返還は,いつまでも可能なのでしょうか?
期限はないのでしょうか?というのが今回の判決になった問題点であります。
一般的に,お金の貸し借りなどは10年が経過すると返還してもらう権利(返還請求権などの債権)は時効により消滅するとされています。(民法第167条第1項,但し,商売で発生した債権とか給与債権などは1年から5年くらいの短期の期間で消滅時効になるので注意が必要です。)
過払金の返還は不当利得という特別な債権ではありませんので,10年で消滅時効になると考えて良さそうです。 (最高裁昭和55年1月24日判決)
では,その消滅時効を業者側が主張する場合に,10年経過したという最初のカウントをはじめる起算点をどこにするかが問題になります。過払金のような不当利得債権は,当事者(貸金業者と顧客)の間の契約による債権ではないので一般的には支払期限がありません。
支払期限のない債権はいつでも権利を主張することが可能ですので,「権利が主張できる」ときが果たしていつといえるのかが問題になるのです。
(ちなみに消滅時効は主張する利益のある者が消滅時効を主張しないと法律上の効果は発生しない。民法145条)
この場合の消滅時効の起算点をの考え方には大きく分けると以下のようなものがあるとされています。
①過払金が発生するごとに10年経過すれば消滅する。すなわち過払金が発生時点を起算点とする考え方 (個別進行説)
②過払金は業者との取引は過払金が発生していても顧客はわからずに 取引を継続しているのだから,最終的に取引が終了した時点を起算点 とすべきであるとの考え方。 (取引終了時説)
①の考え方を採用すると貸金業者側に有利になり,②の考え方をとると顧客側に有利になります。
これまで各地の高等裁判所,地方裁判所,簡易裁判所でも判断は分かれていたようです。
最高裁が出した判決は,上記の②の考え方にたつものでした。
今後の過払金返還請求事件で依頼者の方の利益になるわけですから,ホッとしたところです。
①の考え方ですと,過去の過払い金が全て発生した時点で個別に消えてしまう訳ですから,利息制限法の再計算で予定していた計算金額より大幅に過払い金が減額されてしまったり,逆に借金が残ってしまうことがあります。
実務上,最近は,ちょっと顧客側に不利な判決もありましたので,この判決の意義はかなり大きいと思います。
もっとも衝撃的だったのは,1年前に最高裁が出した途中で完済した取引があると,完済以前の取引と完済後の取引は原則として個別に計算するように判断したことです。
この判決によれば,完済を途中でしていると取引が連続している特段の事情が無い限り一連では計算できず,かなり顧客側に不利になるものでした。
この判決は実務上震撼させるような大事件でした。
今後も,まだいくつか争点になっている点で最高裁の判決が出されることが予想されますが,いずれにせよ,過払金返還請求は時効の問題もありますのでお早めに専門家に依頼されることをお勧めします。
また,貸金業者のなかには,経営が苦しくなり,民事再生などの法的手続きをしている会社や廃業した会社などもあり過払い金の回収が困難になりつつあります。
このような点からも,「もしかしたら過払金があるかもしれない」というお心辺りがある方は,ぜひ,一度,専門家にご相談ください。